緒方恵子の博多人形の作品「桜舞う」です。第41回博多人形与一賞展にて与一賞を受賞しました。着物を着た二人の女性の博多人形です。椅子に腰掛けた女性と茶碗を乗せたお盆を持って立っている女性が遠くを見ています。

博多人形 博多を代表する伝統工芸品 歴史、特徴、作り方について

最終更新日: 2022年6月25日

博多人形の歴史

博多人形の歴史は古く、誕生は江戸時代の初めまでさかのぼります。関ケ原の戦いで功績を上げた黒田長政は、筑前(今の福岡)を新しく治めることになり、1600年頃にこの地に入ります。壮大な福岡城を建築するため、博多から少し離れた福崎(今の福岡市中央区城内)という地に多くの職人が集められました。

集められた職人の中に正木宗七(まさきそうしち)という人がいました。宗七は粘土で瓦を作る職人でした。宗七が粘土で作った人形が今の博多人形の始まりだと言われています。またこの頃には素焼きの人形を愛でる習慣が既にあったとも言われています。

博多素焼き人形から「博多人形」へ

その後1800年代になって、中ノ子吉兵衛(なかのこきちべえ)が素焼きの玩具人形を作りました。中ノ子吉兵衛を博多人形製作の元祖とする説もあります。素焼きの人形は、庶民向けに作る名工が増えたこともあり全国に流通します。

それまでは博多素焼人形と言われていましたが、1890年に大阪で開かれた第3回内国勧業博覧会での出品を機に「博多人形」と呼ばれるようになりました。

世界に知られる博多人形

1900年、1925年にはパリ万国博覧会に博多人形が出品展示されます。1925年のパリ万国博覧会(現代産業装飾芸術国際博覧会)では、博多人形の第一人者である小島与一が代表作「三人舞妓」を出展。銀賞を受賞しました。博多人形は日本国内だけでなくHakata dollとして海外でも大きな注目を浴びました。

博多人形師小島与一の作品「三人舞妓」の銅像です。博多区中洲の那珂川にかかる福博出会い橋のたもとにあります。

博多人形師小島与一の作品「三人舞妓」の銅像です。銅像は博多区中洲の那珂川にかかる福博出会い橋のたもとにあります。

また、博多人形の製作技術が1966年に福岡県指定無形文化財になりました。さらに、1976年には博多人形は伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)で定められた経済産業大臣が指定する「伝統的工芸品」になります。

博多人形は日本を代表する伝統工芸品になり、日本国内だけでなく海外にも販売され、置物や贈り物、縁起物、土産品として愛され今に至っています。

博多人形の特徴

博多人形の特徴は、見とれてしまうほどの写実性に富んだ表情、今にも動き出しそうな躍動感、繊細かつ豊かな色彩などがあげられます。素焼きの人形に色を施していますので、土のぬくもりが感じられて、あたたかく、優しい雰囲気が伝わってきます。

博多人形の種類

博多人形の種類は、「美人もの」、「歌舞伎もの」、「武者もの」、「縁起もの」、「能」、「道釈もの」、「干支もの」、「童」、「節句もの」などがあります。最近は、スポーツ選手、お相撲さん、アニメや漫画、犬、猫などの動物や空想上のキャラクターなどモダンで斬新な作品も注目を集めています。

博多人形ができるまで

博多人形は、構想を練り、粘土から人形の型を成形し、窯で焼き、最後に彩色(絵付け)を行います。一連の人形づくりは伝統的な技法による手作業で、一人の作家(博多人形師)が行う場合がほとんどです。お弟子さんや家族などで分業するところもあります。

博多人形は、一品作と呼ばれる一体だけを手で作り上げていく方法と、原型の人形の型を石膏で作り、同じ人形を何体も複製・量産する方法の二つの方法があります。ここでは後者の型を使った方法をご紹介します。

(1) 構想

博多人形の製作過程における構想です。博多人形師がスケッチブックにデッサンをしています。

博多人形作家がどのような人形を製作するか構想をねります。題材にしたものに関する情報は書籍や資料を徹底的に調べます。人の身体の構造、衣類の皺や生地感なども実際に見て確認します。人形のイメージはスケッチブックにデッサンして構想を固めていきます。

(2) 粘土・土ねり

博多人形の原材料の粘土です。福岡市の油山付近で産出されたものです。

博多人形の原材料は、福岡近郊の油山周辺で取れる粘土を使います。油山の粘土は粒子が細かく良質な白色粘土で素焼きに適しています。

粘土はそのままで使えるわけではなく、沈殿層で精製して不純物を取り除き、粘土の質を高めるために一か月ほど寝かせます。不純物をしっかりと取り除き粘土をしばらく置くことで、焼いた時に人形にひびが入るのを防ぎ、彩色で絵の具がうまくのるようになります。

人形づくりで、粘土はしっかりと練られます。土ねりと呼ばれるこの工程で、粘土は柔らかくなるとともに粘土に含まれている空気が抜かれていきます。空気が残っていると人形の仕上がりに影響が出てしまいますので、しっかりと練る必要があります。

(3) 原型づくり

博多人形の制作過程における原型づくりです。道具のヘラを使って博多人形の模様を彫っています。

博多人形の原型をつくる工程は(8)の面相とともに最も大切な作業です。(1)の構想で作成したデッサンをもとに人形を作っていきます。人形の全体の姿、顔、身体を指先で練り立てます。指先や顔、細かい模様はへラなどを使い仕上げていきます。

原型が完成したら、次の工程、(4) 型取りに合わせて糸や針金を使って複数の部分に切り分けます。写真の原型のように小さい人形では複数に分けないものもあります。複雑な形状の人形になると多いもので20個以上に分割する場合もあります。

博多人形づくりで使う道具

博多人形の製作で使われる道具です。金ヘラ、柘植ヘラ、竹ヘラ、彫刻刀、刷毛、鉛筆、定規などが並べられています。

原型づくりなど、博多人形の製作の過程では、実に多くの道具を使います。金ヘラ、柘植ヘラ、竹ヘラ、彫刻刀、刷毛、鉛筆、定規などがあります。目的に合う道具がない場合は、自分で新たに作ったり他の物を代用したりします。人形作家は博多人形を作るために様々なことを考えます。

(4) 型とり

博多人形の制作過程における型取りで作られた型です。型は石膏で作られます。

切り離した原型の部分ごとに型を石膏で作ります。これを「型とり」といいます。石膏は吸水性が良く再利用が可能なため、博多人形づくりの型に使われています。石膏は高温で熱すると、白色の粉末になります。その粉末に水を混ぜて置いておくと固まり、石膏型が作られます。

型とりは、切り離した原型のパーツ毎に周りを板状の粘土で囲い、その中に石膏の粉末と水をまぜた液を流し込みます。石膏が自然に乾くのを待ち、乾燥したら石膏の型から原型を取り出します。出来上がった石膏型はしばらく乾燥させておきます。

(5) 生地づくり(手押し法)

石膏で作った型に粘土を埋め込んでいきます。この作業は生地づくりと呼ばれています。生地の作り方には「流し込み法」と「手押し法」の2つの方法があります。流し込み法は、泥状にした粘土を石膏の型に流し込んで作ります。手押し法は、粘土を型に押し込んでいく方法です。ここでは後者の手押し法について説明します。

博多人形の制作過程における生地づくりです。石膏の型に、粘土を手で押し込んでいきます。

粘土をよく練り、手のひらでパンパンとたたくなどして厚さ1cm程度の板状にします。この粘土を、型の内側の隅々まで親指を使って押し込みます。型の凹凸にも粘土がしっかり入り込むようにします。

また、人形の強度を保つために内側の粘土の厚みを均等にしなければなりません。均等にならないと(6) 焼成の時にひびやひずみが生じてしまいます。生地づくりは手で感覚を感じながら押し込んでいかなければならないので、経験を必要とする難しい作業です。

型に粘土を押し込んだら、型同士を合わせます。その際、生地と生地が接着する部分に「どべ」と呼ばれる粘土を水で溶いたものを塗ります。どべにより粘土同士がきれいに接合します。どべは、繊細な模様を作る手法「どべ打ち」にも使われます。

型同士を合わせてできる生地の内部は空洞になります。博多人形の内部は空洞になっているのです。(型を使わない一品作も中の粘土をくり抜いて空洞にします。)型の底部分には板状の粘土をはりつけますが、焼いた際に空気の逃げ道となる小さい穴を開けておきます。

博多人形の制作過程における生地づくりです。押し込んだ粘土を石膏の型から取り出します。

粘土を型の内側に押し込み、型同士を合わせてしばらくした後、型から生地をていねいに取り出します。石膏は粘土の水分を吸収して生地との間にわずかな隙間を作るため、型から生地を取り出しやすくしてくれます。

博多人形の制作過程における生地づくりです。石膏の型から取り出した博多人形の生地です。乾燥させた後、焼成します。

型から生地を抜き取ったら接合部分のばりを取ったり、ヘラで整形します。生地が複数ある場合はすべて接合し、分割する前の原型と同じ状態にします。

必要であれば、上述した「どべ打ち」をして模様をつけます。全体を隅々まで見て確認して問題が無ければ生地づくりは完成です。

(6) 焼成

型から取り出した生地は、2、3日ほど自然乾燥させます。乾燥後、ガス窯や電気釜で8時間ほどかけて焼きます。後半の4時間は800 – 1,000度の温度で焼きます。温度が高すぎると(7) 彩色の際に絵の具ののりがわるくなるので注意が必要です。焼成後は窯の中で冷やし、十分に冷ましてから窯から出します。焼成した人形は素焼と呼ばれています。

(7) 彩色

素焼の人形は土の色のままですので、色付けをしていきます。この色付けの作業を彩色といいます。

まず、胡粉(ごふん)という牡蠣やハマグリの貝殻を細かく砕いて粉にしたものを水で溶いて地塗りをします。その後、顔料をニカワで溶いたものを使って、肌、着物や帯、髪の毛の細かい部分まで筆で色付けし描いていきます。必要に応じて金箔を貼ったり、金粉をまぶしたり、胡粉を使って盛上げを行ったりします。

絵の具は最近では化学塗料も使われるようになり表現の幅が広がってきています。

(8) 面相

博多人形の制作過程における面相です。彩色後に、博多人形の顔に表情を描きます。

最後に、表情を描いて人形に命を吹き込みます。この、博多人形で最も重要な顔の表情づくりの作業が面相(めんそう)です。

刷毛で頬紅をいれ、面相専用の筆で口紅、目、まつ毛、眉毛を描きます。描き方によって表情ががらりと変わります。子供のあどけなさ、女性の美しい紅、歌舞伎ものには力強さなど、それぞれにあった表情をえがいていきます。

博多人形は、着物などの衣装や顔、毛髪に至るまですべて手で描かれます。これは他の地域の人形作りと異なる博多人形の大きな特徴です。

(9) 完成

博多人形の制作過程における完成です。彩色、面相後に乾燥させて完成となります。
愛楽雛(男雛 濃紺)博多人形 雛人形

全工程を経て博多人形は完成です。製作日数は、人形の大きさや模様の細かさなどにより異なります。多くは20日から90日かけて作られます。中には半年以上も要する大作もあります。博多人形は一人の作家(博多人形師)によって作られる場合がほとんどです。その多才ぶりに驚かされます。

博多人形と一言で言っても、作風や表情など作家によってそれぞれ異なります。好きな作家を見つけてごひいきにしたり、いろいろな作家の作品を手にするのもよいでしょう。

また、現代の生活にあわせ、モダンな人形や、大きなものから手のひらに乗るほどの小さな人形まで作られています。さまざまな用途やシーンに応じて博多人形を選ぶのも楽しみの一つです。

博多人形に出会うときは、ぜひ作られた過程や作家の想いを考えながら作品をご覧になると、今までと違う側面も見えてくるかもしれません。

撮影協力:
緒方恵子 伝統工芸士(博多人形)
参考文献:
シリーズ日本の伝統工芸 5 博多人形 小島一義指導. リブリオ出版, 1986
“博多人形とは”. 博多人形商工業協同組合. http://hakataningyo.or.jp/about.html, (参照 2022-02-13)

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この記事を書いた人

博多伝統工芸品オンラインショップCrafts of Hakataの店長の田中真です。

田中 真
博多伝統工芸品オンラインショップ Crafts of Hakata の店長です。工房&工芸品ショップめぐり、旅行が大好きです。ユーラシア大陸横断、世界一周など訪れた国は50ヶ国以上。はかた伝統工芸館企画委員、はかた国際工芸協会事務局。代表をつとめる(株)トリップインサイトでは工房を訪れるツアーを企画催行しています。

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