最終更新日: 2023年2月6日
このページでは、博多織の特徴、歴史、作り方、種類、献上柄、求評会、おすすめの博多織商品について紹介します。
博多織の特徴

博多織は福岡県福岡市の博多地区で作られる織物で、博多、日本を代表する伝統工芸品です。国が指定する236品目ある伝統的工芸品にも選ばれています。
博多織の帯を締めると、「キュッ、キュッ」という絹の織物ならではの音「絹鳴(きぬなり)」がします。絹だとかたいイメージがありますが、博多帯は張りはあるのに締めやすい帯で、しかも一度締めたら緩みにくいと言われています。
博多織は細い経糸(たていと)をたくさん使い、太い緯糸(よこいと)で打ち込んで作られています。普通の帯では経糸を4,000から5,000本使いますが、博多織で作られた帯では6,000本以上、多いもので15,000本もの経糸を使うほどです。

古くは武士も締めていました。お相撲さんの帯が博多織なのはよく知られています。ただし幕下以上の実力のある力士でなければ博多帯を締めるのが許されないと言われています。
博多織の絵柄はさまざまですが、「献上柄(けんじょうがら)」といわれる伝統的な模様があります。江戸時代に福岡藩主が幕府に献上していた博多織の柄から由来しています。
たくさんの縦糸が使われて丈夫で張りと厚みがあり、締めやすく、一度締めたら緩まない締め心地、献上柄と呼ばれる独特の模様があるのが博多織の特徴です。博多織の博多帯は、着物を着る人は誰もが憧れる人気の帯です。
博多織の歴史

博多織はどのように伝わったのでしょう。鎌倉時代の1235年、博多の商人である満田彌三右衛門(みつたやざえもん)は、円爾弁円(えんにべんえん 諡号: 聖一国師 しょういちこくし)和尚の随行者として南宋(現中国浙江省寧波)へ向かいました。満田彌三右衛門は33歳、円爾弁円は34歳の時です。円爾弁円は博多の承天寺、京都の東福寺の開山で知られる高僧です。
彌三右衛門は6年間、宋に滞在し、織物、朱焼(朱)、箔焼(箔)、素麺、麝香丸(じゃこうがん)の5つの製法技術を学び、1241年に円爾弁円と一緒に博多に戻ってきます。

博多に戻った彌三右衛門は、博多の人に南宋で学んだ箔焼、素麺、麝香丸の技術を教えました。しかし、織物と朱の技術だけは家伝とし自分の家族にのみ伝えました。彌三右衛門はその技法にさらに工夫や改良を加えながら代々伝えていきます。
博多帯の起源と博多織中興の祖 竹若藤兵衛・竹若伊右衛門
満田家ではその後も織物業が営まれてきました。彌三右衛門がこの世を去って250年もの長い年月がたった室町時代の1530年頃、彌三右衛門の子孫、満田彦三郎が明(現中国揚州広東地方)に渡り織物の技術を追及します。
彦三郎は帰国後に織物を営み、同じ博多に住む竹若藤兵衛に織物の技術を教えます。藤兵衛は彦三郎に師事し博多織の改良を重ねに重ねます。
1540年頃、藤兵衛は生地が厚くて堅い浮き出た模様(浮線紋)がある織物を作り上げ、これを帯地として作り「博多織」と名付けました。これが博多帯の起源だと言われています。
その後、養子の竹若伊右衛門がさらに研究を続けました。竹若藤兵衛、竹若伊右衛門は博多織の中興の祖とされています。


文明開化で導入されたジャカード機により博多織が発展
明治になると文明開化を機に政府の奨励策を受けて、織物業界に欧米の近代技術が導入されるようになります。博多織に合う織機として「ジャカード機」が選ばれ、1884年以降に一般の織物工場で使われるようになりました。
導入以前に比べて人手や制作時間が少なくなり、複雑な紋様を織ることできるようになるなど博多織の発展に大いに貢献します。
ジャカード機はフランス人の発明家、ジョセフ・マリア・ジャカールにより作られた織機で、穴があけられた紋紙(パンチカード)を何枚も綴ることによって経糸の動きをコントロールして織るものです。穴が開いている、開いていない、つまり0か1かの原理のジャカード機はコンピューターのアイディアになったと言われています。
紋紙は博多織の織機で見ることができます。

博多織の作り方
(1) 絹糸をつくる

A) 養蚕
カイコの卵は1ミリほどの大きさです。それから孵化したときは12ミリです。カイコは桑の葉を食べて70ミリまで成長します。そのうちに桑を食べなくなり、真っ白だったカイコは乳白色になります。このように変化したカイコは繭作りを始めるので、蔟(まぶし)*に移します。カイコは糸を吐いて、2~3日で繭ができます。
*蔟(まぶし):蚕が繭を作る場所
B) 繭を集める
カイコが繭から孵化する前に、蔟(まぶし)から繭を集めます。
C) 製糸
繭を乾燥させたあと煮ます。
そうすることで繭がほぐれていき糸が取りやすくなります。
(2) 博多織をつくる

A) 企画
まず何を作るための生地にするかを決め、さらに献上柄にするか、他の柄にするか、どのような色にするかを決めます。
博多織で作られるものは、帯、着物だけではありません。今では、名刺入れ、お財布、定期入れ、しおり、バッグなどのグッズ、小物、雑貨や、テーブルセンター、マットなどのキッチン・インテリア用品も作られています。
B) 意匠デザイン
博多織の絵柄、デザインを決めます。柄の図案を実際に織物で作れるようデザインしていきます。
以前は方眼紙に手書きで経糸と緯糸を描き色付けをしてデザインを構成していました。今はコンピューターが導入されて作業は効率化されたましたが、それでも感性、表現力、デザイン力などきめ細かく大変な仕事です。
C) 染色
生糸の汚れ等を除き、絹糸に仕上げます。
博多織は糸に先に染める先染めの織物ですので、色見本に合わせて染色を作り、経糸と緯糸を染めていき絹の光沢を出すよう仕上げます。見本通りの色を出すのに、技術とセンスを必要とします。
染める方法には、機械染めと手染めがあります。染料も天然染料・化学染料があります。
D) 糸の準備

織物を作るには経糸(縦糸)と緯糸(横糸)が必要となります。きれいに染められた経糸と緯糸を枠に巻いていきます。
E) 機仕掛(はたじかけ)と製織(せいしょく)

博多織の織機に経糸をセットします。機仕掛と呼ばれ、多数の経糸を一本一本扱う非常に細かい作業です。
手織りでは、織機を使ってトーン、トントントンとリズムよく音を響かせながら織っていきます。柄や色を変えるときは糸と糸を一本一本手で結び付けます。
(3) 博多織の証紙

厳しい検品を受け合格した織物だけが博多織として証紙が発行されます。左側の証紙は「金の証紙」で、絹50%以上使用の着物や帯に貼付されます。右側は「金丸の証紙」で、絹50%以上使用の小物に貼付されます。他に絹50%未満使用の「青の証紙」、着尺・袴地の「着尺・袴」があります。
博多織の種類

博多織の種類は次に分けられます。
- 献上および変り献上(けんじょう・かわりけんじょう)
- 平博多(ひらはかた)
- 佐賀錦(さがにしき)
- 間道(かんどう)
- 総浮(そううけ)
- 重ね織(かさねおり)
- 絵緯博多(えぬきはかた)
- 捩り織(もじりおり)
- 博多涼し(はかたすずし)
- 着尺(きじゃく)
- 袴地(はかまじ)
献上柄について
博多織は、「献上柄」といわれる伝統的な模様があります。江戸時代に福岡の藩主、黒田長政が幕府に献上していた博多織の柄から由来しています。博多献上柄とも呼ばれます。
献上柄は、次の4つの模様からなります。
- 独鈷(どっこ)
- 華皿(はなざら)
- 中子持縞(なかこもちじま)
- 両子持縞(りょうこもちじま)
仏具として使用する独鈷、華皿をモチーフとしています。独鈷は、人間だれしもがもつ煩悩を打ち砕くとされるものです。華皿は仏様の供養の時にまくお花を入れるお皿です。どちらも、魔除け、厄除けの願いが込められています。
中子持縞と両子持縞は、親を表す太い線と子供を表す細い線からなります。
中子持縞は、太い縞が細い縞を挟む縞模様で、親が子を守るという意味があります。別名、親子縞といいます。両子持縞は、細い縞が太い縞を挟む縞模様で、子が親を慕い守るという意味があります。別名、孝行縞といいます。
どちらも親子の愛情、家内繁盛、子孫繁栄の願いが込められています。


博多織五色献上

博多織には、福岡の黒田藩主が徳川幕府に献上したものを、「博多織五色献上」といい近年になって再現され、「紫、青、赤、紺、黄」の五色からなります。
「紫」は昔から高貴な色とされています。再現された染料はムラサキ草の根で染色されました。
「青」は季節の初めの色を表しています。アイで染色されています。
「赤」は天に昇る太陽を表しています。染料は日本アカネの根を使っています。
「紺」は信用を表現しています。青とはまた異なり深みがあります。染料はアイを使用しています。
「黄」は皇帝の威力を表現しています。ヤマモモの皮を使って染色しています。
博多織の帯、着尺の最新作を見ることができる「博多織求評会」


博多織の新作が発表される大きな展示会が2つあります。
一つは「博多織求評会(はかたおり きゅうひょうかい)」です。博多織求評会は博多織と関係が深い承天寺で毎年秋に開催されます。2023年で第121回を数える伝統ある行事で、およそ200点もの博多織の新作が展示されます。博多織の帯、着尺の最新作をたっぷり見ることができる人気の展示会で、毎年とても賑わいます。
もう一つは「新作博多織展」です。新作博多織展は、毎年春に東京で開催されます。どちらも着物を好きな方にはたまらない展示会です。
>> 「博多織の帯、着尺の最新作がずらりと並ぶ 博多織求評会」を見る
いつも身につけるものだから伝統工芸品にこだわりたい
博多織は帯、着物、扇子などの服飾雑貨だけでなく、現代の生活にあったものにも使われています。ネクタイや名刺入れ、お財布、定期入れ、しおり、バッグなどグッズや小物です。

>> 「博多織の手織りの名刺入れ 自分用、入社、就職、昇進のお祝い、父の日のプレゼントに」を見る
テーブルセンターやマットなど食卓やインテリアにもマッチします。デザインも伝統的な献上柄をはじめ、ドット、動物の柄など幅広いです。
博多織は人気のある憧れの伝統工芸品です。博多帯はもちろん着尺や博多織で作られたグッズや小物を持つことで、伝統と絹の美しさを楽しめ優雅な気持にさせてくれます。いつも身につけるものだからこそ、伝統とモダンな伝統工芸品にこだわりたいですね。
撮影協力:
宮嶋美紀
参考文献:
博多織工業組合編 . 博多織史 . 博多織工業組合 , 2008
福岡市博物館 . 電気紋織-博多織から生まれた技術革新-(企画展示解説) , 2020
宮嶋美紀の博多織の商品を博多伝統工芸品オンラインショップでご購入いただけます。
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この記事を書いた人

田中 真
博多伝統工芸品オンラインショップ Crafts of Hakata の店長です。工房&工芸品ショップめぐり、旅行が大好きです。ユーラシア大陸横断、世界一周など訪れた国は50ヶ国以上。はかた伝統工芸館企画委員、はかた国際工芸協会事務局。代表をつとめる(株)トリップインサイトでは工房を訪れるツアーを企画催行しています。