人形師 中村信喬展 Nakamura Shinkyo Japanese Figural Crafter

博多人形の鑑賞だけでない 九産大美術館で開催の「人形師 中村信喬展」を見てきました

最終更新日: 2022年11月29日

こんにちは。博多伝統工芸品オンラインショップ Crafts of Hakata 店長のタナカです。

福岡市東区にある九州産業大学美術館で開催されている「人形師 中村信喬展」を見てきました。

人形師中村信喬展が開催されている九州産業大学美術館の外観です

九州産業大学卒業生の企画展「卒業生 プロの世界」

「人形師 中村信喬展」は、同美術館で2009年から開催している企画展示会「卒業生 プロの世界」の第8回目です。「卒業生 プロの世界」は、国内で活躍する九州産業大学の卒業生の作品を展示する企画展で、これまで写真家 野村佐紀子氏、CGアニメーション作家 森りょういち氏、アートディレクター 井上広一氏などの展示会が実施されています。

京都で異なる工芸作家に師事

博多人形を製作する中村信喬さんは、1957年、福岡市で博多人形師の三代目として生まれました。1975年に九州産業大学芸術学部を卒業。大学卒業後は、京都で人形作家の林駒夫氏、陶芸家の村田陶菀氏、能面師の北沢一念氏に師事し、博多人形だけでない幅広い工芸の世界を学ばれました。

その影響もあってでしょうか、今でも木彫りや、陶彫、彫刻の作品を作られています。博多人形だけではないのです。

今回の展示では、九州産業大学時代や京都での作品など若い時の制作物も展示されています。

見ごたえ十分な天正遣欧少年使節の作品

まだ若い頃にお父さん(中村衍涯(えんがい))に言われた言葉、「自分が作ってると思うな、受け継いだものが出ているのだ」は印象的でした。博多人形師の家系である中村家には、守らないといけない決まりはありません。決まりがあって、何かにこだわるようになると新しいことができなくなるのを避けるためだそうです。そのため、中村信喬さんはお父さんが作った博多人形の型をすべて捨てられました。

順路を追って作品を見ていくと、博多祇園山笠の舁き山、飾り山で使用される人形の展示がいくつかありました。中村信喬さんは、複数の山の人形を制作されるほどです。作品を間近で見ることができて、山笠の頃に博多の街中で見るのとは違いとても迫力があります。

数々の作品の中でも圧巻は天正遣欧少年使節の人形です。「千々石ミゲル」、「大聖堂」など、表情、色、形などいつまでも見続けてしまうほどです。2011年にローマ法王ベネディクト16世に拝謁し、天正少年使節の一人である「伊東マンショ像」を、2019年にはローマ教皇フランシスコに「中浦ジュリアン」をそれぞれ献上されたそうです。

博多人形の鑑賞だけでなく、多くの気づきをいただける

美術館の2階には動画が放映されていました。

その動画の中での話です。京都でのある日、夜遅くまで仕事をしていたところ、雪が降ってきたそうです。師匠から「翌朝、早起きして南禅寺に行けば、足跡の一つも無い美しい世界が見れる」と言われます。しかし、寝坊して見ることが出来ず。悔しい思いをしたこの日以来、人から何か勧められたら必ず見るようにしているそうです。

中村信喬さんは、パブリックアートも数多く作られています。昔、家族で福岡市動物園に行った時、子どもがゴリラのモニュメントに座っているところを写真に撮った記憶がありますが、このゴリラはなんと中村信喬さんの作品でした。そうだったんだ!またゴリラに会いに動物園に行きたくなりました。

個人の方や、企業さんが所有されている作品の展示もいくつかあり、どれも見ごたえがあります。

これだけ多くの作品を作り続けるほど多忙なのに、人間国宝でも落選すると言われる日本工芸会の「日本伝統工芸展」には必ず毎年出展されているそうです。日本伝統工芸展は、日々研鑽することを怠って慢心や気の緩みが作品に表れると落選させられるとのこと。そんな厳しい工芸展に毎年出品されるその姿勢に胸をうたれました。

「人形師 中村信喬展」は、博多人形の作品を鑑賞するだけでなく、創造、発想、生き方などについても学ぶことできました。作品が生まれる機会を知ることができましたし、工芸品に限らず、ブランディング、マーケティングについてもとても示唆があると思いました。

展示を見終わって美術館を出る際、学生さんにお礼をお伝えしたところ、図録を無料でいただきました。これは嬉しいですね。「人形師 中村信喬展」の開催は11月27日(日)までです。とても貴重な展示会なのでおすすめです。

プロの世界vol.8 人形師 中村信喬展

1.日にち: 2022年9月17日(土)〜 11月27日(日) *休館日:月曜日

2.時間: 10:00 – 17:00 *入館は16:30まで。水曜日は19:00まで。

3.主催: 九州産業大学

4.入場料: 一般200円、大学生100円、高校生以下および65歳以上は無料

5.場所: 九州産業大学美術館
  住所: 〒813-8503 福岡県福岡市東区松香台2-3-1
  TEL: 092-673-5160
  URL: https://www.kyusan-u.ac.jp/news/nakamurashinkyoten/

人形師 中村信喬展 令和4年9月17日(土)~11月27日(日) 会場 九州産業大学美術館
人形師 中村信喬展
人形師中村信喬展が開催されている九州産業大学美術館の外観です

「人形師 中村信喬展」が開催されている九州産業大学美術館の外観です。展示は2022年11月27日(日)までです。

この記事を書いた人

博多伝統工芸品オンラインショップCrafts of Hakataの店長の田中真です。

田中 真
博多伝統工芸品オンラインショップ Crafts of Hakata の店長です。工房&工芸品ショップめぐり、旅行が大好きです。ユーラシア大陸横断、世界一周など訪れた国は50ヶ国以上。はかた伝統工芸館企画委員、はかた国際工芸協会事務局。代表をつとめる(株)トリップインサイトでは工房を訪れるツアーを企画催行しています。

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