最終更新日: 2023年1月27日
こんにちは。博多伝統工芸品オンラインショップ Crafts of Hakata 店長のタナカです。
伝統的工芸品って何だろう?伝統的工芸品と伝統工芸品の違いは?この記事では、伝統的工芸品と伝統工芸品との違いや、伝統的工芸品産業の振興に関する法律の目的、福岡県内の伝統的工芸品など、伝統的工芸品についてわかりやすく解説します。
伝統的工芸品と伝統工芸品の違い
伝統的工芸品は、伝統工芸品と混同してしまいますが、伝統工芸品の伝統に「的」が付いた用語です。
伝統工芸品には明確な定義はありませんが、「長年受け継がれてきた、主に手作りの技法で作られる日用品」ということが出来ます。
漆器、人形、織物、木工品、仏具など様々な種類からなり、約1,200の伝統工芸品が日本全国にあると言われています。地域それぞれの特色を生かした材料、デザイン、技法で作られているのが特徴です。
伝統的工芸品は、その伝統工芸品のうち法律で定められ、経済産業大臣が指定した工芸品です。2022年3月18日現在、全国に237品目あります。
伝統的工芸品の指定を受ける条件
伝統的工芸品の指定を受けるためには、次の5つの要件を満たし、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(以下、伝産法)」に基づく経済産業大臣の指定を受ける必要があります。
- 主として日常生活の用に供されるものであること。
- その製造過程の主要部分が手工業的であること。
- 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
- 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
指定を希望する場合は、事業協同組合等の団体が都道府県知事を経由して経済産業大臣に申請します。上記5要件に適合するかどうかの審査には2年以上かかると言われています。しっかりとした準備が必要になります。
このように、指定を受けるためには伝統工芸品の産地が経済産業省に自ら申請しなければなりません。上記の5つの要件をクリアしている伝統工芸品でも申請しないものも中にはあります。そのため、伝統的工芸品であることが工芸品の価値や良否、優劣を必ずしも決めることにはなりません。

伝統的工芸品産業の振興に関する法律の目的
伝産法は何のために作られた法律なのでしょうか?伝産法の法令、第一条には次のように書かれています。
伝統的工芸品産業の振興に関する法律
昭和四十九年法律第五十七号 伝統的工芸品産業の振興に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造される伝統的工芸品が、民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれてきたこと及び将来もそれが存在し続ける基盤があることにかんがみ、このような伝統的工芸品の産業の振興を図り、もつて国民の生活に豊かさと潤いを与えるとともに地域経済の発展に寄与し、国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=349AC1000000057
つまり、伝統的工芸品の産業の振興をはかること、国民の生活を豊かにすること、地域経済、国民経済の発展に寄与することを目的としています。
伝統的工芸品産業振興・支援について
伝統的工芸品の指定を受けることによって、産業振興補助金(年間予算約7億円)や産業支援補助金(年間予算約3億円)を利用して需要開拓事業、後継者育成事業などを実施することが可能になります。
需要開拓事業では、日本国内および海外でショールームを開設して、ブランディング、市場調査、海外展開や販路開拓の支援、新商品開発・成果発表展示会を実施します。
本事業は 、各産地における伝統的工芸品の原材料確保対策事業、若手後継者の創出育成事業のほか、観光など異分野との連携や他産地との連携事業、国内外の大消費地等での需要開拓などに対して支援します。
後継者育成事業では、ワークショップや講習を通じて工芸作家の技術力のアップ、伝統的技術の習得により後継者の育成を支援します。
伝統工芸士とは
この経済産業大臣が指定した工芸品である伝統的工芸品の制作者のなかから、12年以上の実務経験があり、高度の技術・技法を持つと認定を受けた工芸士が「伝統工芸士」です。試験には知識試験、実技試験、面接試験があります。伝統工芸士は言わばトップクラスの伝統工芸作家です。

博多人形の伝統工芸士会の作品展が福岡市のはかた伝統工芸館で毎年開催されています。伝統工芸士の卓越した技術を目の当たりにできる大変貴重な展示会です。
>> 博多人形伝統工芸士の偉大さを実感できる第6回博多人形伝統工芸士会作品展
福岡県内の伝統的工芸品
福岡県内で伝統的工芸品の指定を受けたものは次の7品目です。

福岡県知事指定特産工芸品・民芸品
国による指定の伝統的工芸品とは別に、各県知事が指定する工芸品もあります。
福岡県の場合、福岡県知事指定特産工芸品・民芸品があります。全部で34品目からなります。
福岡県知事指定特産工芸品・民芸品(34品目)
福岡地域
- 博多曲物(福岡市)
- 博多鋏(福岡市)
- 津屋崎人形(福津市)
- 木うそ(太宰府市)
- 博多張子(糸島市ほか)
- 福岡積層工芸ガラス(福津市ほか)
- 博多独楽(福岡市)
- 博多おきあげ(福岡市)
- 今宿人形(福岡市)

北九州地域
- 孫次凧(北九州市)
- 八朔の馬(芦屋町)
筑豊地域
- 英彦山がらがら (添田町)
筑後地域
- 籃胎漆器(久留米市)
- きじ車(みやま市)
- 八女手漉和紙(八女市ほか)
- 八女石灯ろう(八女市ほか)
- 掛川(大木町ほか)
- 赤坂人形(筑後市)
- 鍋島緞通(久留米市)
- 柳川神棚(柳川市ほか)
- 八女竹細工(広川町ほか)
- 筑後和傘(久留米市ほか)
- 八女和ごま(八女市)
- 杷木五月節句幟(朝倉市)
- 八女矢(八女市ほか)
- 城島鬼瓦(久留米市)
- 久留米おきあげ(久留米市)
- 大川総桐タンス(大川市ほか)
- 大川彫刻(大川市)
- 大川組子(大川市)
- 柳川まり(柳川市)
- 棕櫚箒(うきは市)
- 八女すだれ(広川町ほか)
- 天然樟脳(みやま市)
伝統マーク

伝統マークは、経済産業大臣指定の伝統的工芸品のシンボルマークです。伝統的工芸品には伝統マークをつけることができます。伝統マークを作成したのは亀倉雄策氏です。亀倉氏は1964年東京オリンピック、Nikon、グッドデザイン賞、NTTなどのロゴマークを生み出した日本を代表するグラフィックデザイナーです。
参考文献:
経済産業省. “伝統的工芸品に関する法律について”.
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/densan/designation.html, (参照2022-04-12)
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この記事を書いた人

田中 真
博多伝統工芸品オンラインショップ Crafts of Hakata の店長です。工房&工芸品ショップめぐり、旅行が大好きです。ユーラシア大陸横断、世界一周など訪れた国は50ヶ国以上。はかた伝統工芸館企画委員、はかた国際工芸協会事務局。代表をつとめる(株)トリップインサイトでは工房を訪れるツアーを企画催行しています。